Sunday, March 13, 2005

こんな目標管理制度は要注意!【目標設定編】2

2. 思ったように認識されない“組織目標”

~こんな目標管理シートじゃ、組織目標は達成できない!?~

経営戦略実現のためのツールとして目標管理制度を発展させたいと考えている企業の目標管理シートを拝見すると、個人目標の設定欄の他に『組織目標』の記入欄を設けていたり、マニュアル等では、目標設定時には上司の目標との連動を図ることを促す記載が目立ちます。 上位目標との連鎖をしっかりと行っていきたいという意図がうかがえます。

ただし、実際に記載された内容をみると、

『同じ組織に属すメンバーの間で、「組織目標」欄に記載されている内容がバラバラ』
『組織目標は同じなのに、メンバーごとに目標項目に掲げられている個人目標がバラバラ』
『直属上司の目標に掲げられている内容と、部下の目標が連動している箇所が一箇所もない』
『関連部署と協働して達成すべき目標なのに、他組織では意識され、他方では何も触れられていない』
などの状態で、うまくかみあっていない状況があります。さらに、組織目標の大もとを発信する立場の、『役員層には目標管理が導入されていない』などといった企業もあります。

具体的なものを見ていきましょう。



例1は、上司から伝えられた組織目標を、メンバーが勝手に解釈し直して、それぞれの思いの中設定し、上司がメンバー間の認識の違いを修正していないというケースです。上記の場合は、個人目標については、同一の指標が掲げられており、一見問題ないように思います。
しかし、右の例の「ビジネスの可能性を見極める」という記述をしている社員は、この期において売上数字を達成していくことが、それほど重要とは思っていないのかも知れません。

組織目標の伝えられ方は、1対1の上司との面談を通じてのみで、組織全員で組織目標を共有する場がないという企業も多いです。この場合、メンバーすべてが同じように受け取っているとは限りません。
“組織目標”が大事と言っていても、目標管理シート上では意外と、この“組織目標”の欄が軽視され“形式上書いてあるだけ”という運用の会社も多いようですが、実は大きな問題を含んでいることもあるのです。

例2では、組織目標の内容はそのまま伝わっているようですが、それを個人目標に展開した場合、一方は“顧客の数”を追う、他方は売上の“額”を追うとしています。

「市場開拓」という組織目標のもとでは、「数」も「額」もともに立派な目標項目となります。

しかし、営業担当の行動レベルでは、 「数」を追うのと「額」を追うのとでは営業活動に大きな違いが出るケースもあります。

「数」であれば、小額の案件でも広くあまねく攻めていくという動きをとっていくでしょうし、「額」であれば、1社で大きな額が狙える相手先に深く攻めるという動きになるでしょう。

営業担当個別に、上記のような様々な動きを「市場開拓」していくという期待のもと、組織目標を展開しているのであれば、問題はありませんが、そうでない場合が多いようです。

組織長としては、大きな方向性とともに、メンバーにどういう動きをとって目標達成していくのかを、具体的な期待とともに伝えていく必要があるといえます。



例3は、新商品を数多く出し、市場に展開していきたい開発部と、既存商品でシェアアップを図りたい営業部とで、方向性が大きくズレているケースです。

つまり、ヨコの連鎖がうまくいっていない状態です。

この場合、全社的な視点が欠け、部門ごとの部分最適に陥っていることが考えられます。このままでは、部門目標は達成しても、全社目標は達成しないという状態を生みかねません。

例1-3は多少極端なケースですが、目標管理では組織目標を連鎖させることが大事と言われていても、なかなかうまくいっていないのが実情です。

目標管理制度を戦略実現のためのツールとして機能させるためには、個人目標を記述するテクニックを高めていくよりも、

組織目標を如何に洗練され、分かりやすいものにするか?
組織目標の意義や重視したいポイント等をメンバー全員で如何に共有できるか?
さらには、ヨコの組織との連携やシナジーをいかに図っていけるか?
がポイントといえます。

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