Sunday, March 13, 2005

失敗しない360度評価制度の導入法2

2.360度評価制度導入・運営のポイント

『部下が上司を逆査定する』ための手法ではなく、経営の意思を伝え、人事制度をより納得性高く運用するために、経営戦略の施策として位置づけることが重要です。そして、より効果的な施策とするために、以下のような実務上のポイントがあります。


■目的の明確化
評価手法を前面に出して導入するのではなく、どのような効果を期待してこの手法を導入するのかを十分に社員に伝えることが重要です。CS(顧客満足)という観点からすれば、“上司の顧客は部下”、「顧客の声を聞く」という360度評価の本質は忘れてならない視点と言えます。



■評価結果を処遇に直接反映させる場合は慎重に
360度評価制度を導入して、失敗していると言われている企業の多くが、360度評価制度を処遇決定(昇進昇格基準や賃金決定)に直接反映させている、もしくは、直接反映しているのではないかと従業員に「思われている」場合です。

前ページで、360度評価は評価制度の納得感の向上につながると申し上げましたが、例えば評価結果自体の平均値は、所属している組織風土に左右されたりするなどバイアスがかかっていること、本人の周囲への関わりによって予想以上に上下することが言われており、何の策も打たずに360度評価結果を直接処遇に反映させることはかえって納得感の低下につながり、 デメリットが多いといえます。ですので、360度評価の処遇への反映は、上司評価時の参考資料程度にとどめ、かつ、本人へのFBや事実確認(どうしてこういう高い/低い評価となっているのかの自己認識の確認など)を行うことが求められます。



■トップからの導入
やはり“改革はトップから”行うべきものであり、経営トップ層の自己革新の意気込みを伝えます。 360度評価から何が読み取れるのか身をもって体験し、部下の結果を解釈しフィードバックするときの貴重なノウハウとするためにも上層から実施することが望まれます。



■的確な名称
“評価”は、多義的な意味を含むがゆえに“査定”という響きを思い起こす社員もいます。たとえば、評価表(評価シート)は、“行動診断調査表”、“エンパワーメント実践質問票”、“リーダーシップサーベイ”などにしたり、後のフィードバックや研修など行われる施策全部を総称して、○○プログラム、××制度、△△システムとしたりします。



■評価時の選定工夫
データを活用する人は誰かという観点を中心に、企業の風土や実施目的に合わせて評価者選定の方法を変えます。本人に評価者を選ばせる、一定の条件から上司に選択させる、ある階層以上に限定するなどフレキシブルに行います。



■自己評価の実行、評価項目の公開
本人も自己を評価し周囲の評価とのギャップを理解させるようにします。さらに初回の評価を行う前に、対象者及び評価者に広報しその内容の意味を理解してもらう機会をつくります。説明会だけでなく、360度評価の評価項目についてその背景から意図について説明する講習会を運営している企業もあります。



■評価者匿名性の確保
配布時は評価者ごとへ直送し、回収時は人事あるいは研修部などへ直送するようにします。



■本人へのフィードバック
360度評価単体で実施をせず、自己啓発・能力開発のきっかけづくりを目的として必ず本人に結果を返却し、 何をどうするべきか議論する場を設けます。職場の上司、メンバーを巻き込んだフィードバックシステム(職場ミーティング)を導入し、組織活性化につなげるためにオープンなコミュニケーションを実践している企業もあります。



■複数回実施
“変化する行動”を評価していることを認識してもらい、日頃から期待されている行動を意識し、行動を変革することが重要であることを明確にします。

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