Sunday, March 13, 2005

こんな目標管理制度は要注意!【目標設定編】1

http://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/jinji-seido/200405/

日本企業における目標管理制度(Management by Objectives and Self Control)の導入率は8割以上と言われるほどポピュラーな仕組みとして企業に根付きつつあります。


制度導入が進む中、関心事は、「成果主義時代の評価の仕組みとして目標管理制度をどう設計するか?」ということから、「戦略実現のツールとしてどう活用していくか? 」「他の経営管理の仕組みと連動させて、いかに効果を高めるか」に移っているように思います。

“今月の特集では、主に目標管理制度の「目標設定」時の課題に焦点をあて、弊社が関わった目標管理制度に関するコンサルティングの経験談~とりわけ、“目標管理制度に課題を感じていると思われている会社の目標管理マニュアルや実際に記入された目標管理シートの添削”を通じて見えてきた課題や、その課題を解決策を提示していきたいと思います。


1. あなたの会社の目標管理は何のためのものですか?

~問題をつぶす前に、原点に立ち戻りましょう~

【導入目的の3パターン】

各社で導入・運用されている目標管理の特徴や課題を聞いていると、導入目的に応じていくつかのパターンがあることが見えてきました。大きく整理すると、以下の3つのパターンです。

パターン1:戦略実現のために用いる“マネジメント”ツール

【目的】

本来の目標管理制度の目的に沿う形で導入され、展開されているパターンです。
【運用のポイント】

このような会社は、「方針管理」などの手法とあわせて実施されており、比較的タテ方向の連鎖(目標のブレークダウン)はうまく行われています。
また、重要な取り組みにしぼって各組織、チーム、個人へと展開されてます。そのため、個人に展開する際は、日常取り組んでいるすべての仕事について目標として掲げるのではなく、重要なもののみ3つ目標とするなどといった運用をしている企業も多いです。
【課題のポイント】

タテ方向の連鎖が行き過ぎるとトップダウンが強くなり、従業員が「目標はトップから与えられるもの」という考え方になりがちで、「 and Self Control (自己統制)」の色合いが弱まります。そのためかえって従業員の自主性を損なってしまうという状況もあるようです。
パターン2:人事処遇決定のための“人事管理”ツール

【目的】

成果主義人事制度を強力に推進していくための人事管理のためのツールとして展開されているパターンです。
【運用のポイント】

成果に応じた処遇を実現するために、当該期間にあげるべき成果を目標として展開し、その達成度を評価していくというものです。現在、多くの企業で導入されておるのは、このパターンのものがほとんどといえます。
納得感高く、公正な運用ができるようウェイト、難易度、達成基準など細かな運用ルールを定めています。
【課題のポイント】

このパターンの課題としては、人事処遇へのつながりを意識するあまり「チャレンジャブルな課題を部下に任せられない」「本来の業務とはかけ離れた目標を設定してしまう」「目標管理が単なる評価の手続きと認識されてしまう」など、本末転倒な状況を生み出しているということが挙げられます。
パターン3:“コミュニケーション”の円滑化のためのツール

【目的】

人事処遇との結びつけというよりは、上司-部下間のコミュニケーションを円滑にし、仕事を進めやすくするためのツールとして展開されているパターンです。
【運用のポイント】

上位目標との整合性を重視するというよりは、本人にとって「やりたいこと」「やれること」を中心に目標設定し、チャレンジしていくということを重視しているものです。
そのため、個人の「能力開発目標」など、定量的な成果以外の目標の比重も高く設定されています。
【課題のポイント】

このパターンの課題としては、導入当初は「上司-部下間の会話が増えた」「仕事がやりやすくなった」などの声があがりますが、運用を重ねると、「何のためにやっているのか?」とそもそも論になりやすく、形骸化していくケースが多いようです。
いずれのパターンの目的においても課題はあるものの、目標管理制度は使えないものとして全く廃止してしまうということはなく、より良い仕組みになるよう試行錯誤を重ねているというのが実情です。 その解決の手段として「ミドルマネジメント層のスキルアップ」が取り上げられ、面談トレーニングや目標設定トレーニングなどを検討する企業が多いです。


【運用段階に応じたゴール設定】

このような課題を抱える状況で、コンサルタントとして、お客様に問いかけるのは
(1)現在の目標管理制度は何を狙って導入したのですか
(2)今後はどのような方向にむかっていきたいと考えていますか?
(3)目標管理がうまく運用されているとは、自社にとってどのような状態になることですか?
の3点です。

各種の組織人事制度や新たな経営管理手法の導入にあたっては、その企業のビジネスの仕組みや成長段階、社員の理解力・運用力など、導入時の状況に応じて、どのような目的のもと、どんな機能を備えるべきかを検討し、ゴールを定め設計していきます。そして一定期間の運用後、導入当初の目的が果たせているのか、検証を行い、必要に応じて見直しをかけていきます。

目標管理制度についても同様であり、導入後何年かが過ぎたら、当初の導入の目的が果たされているのかどうかを検証したり、企業を取り巻く内外の環境が変わってくれば、導入目的の見直しとともに、それに伴った制度内容の変更をしていくべきです。

当初は、コミュニケーションツールとして位置づけていた企業も、それを一貫して通すのではなく、次の段階では、人事処遇のためのツールとして位置づける、さらにその次は、組織業績のマネジメントツールとして活用していくなど、段階的にゴール設定しながら、目標管理の運用力を高めていくことが重要だと考えます。そのために、前述の3つの質問をなげかけています。

★最近の目標管理制度の傾向

コミュニケーションツールとして導入した企業→人事処遇との連動を模索する
人事管理ツールとして導入した企業→経営戦略実現のためのツールへ位置づけを変更する
経営戦略実現のためのツールを目指す企業→目標管理以外の経営管理手法との連動(たとえばバランススコアカードなど)を図る
このような動きが見られます。方向性は、戦略実現のためのツールとしての位置づけが多く、キーワードは、人事主導型の展開から現場主導へ、個人目標設定のテクニック論から組織目標と個人目標の戦略的な連鎖へと関心が移っているといえます。

ただし、一足飛びに理想像に近づくのはなかなか難しい実情があります。 どのような段階であれ、次の段階をめざす場合、「なぜやるのか」、「何をするのか?」が不明確で従業員に伝わっていない状況で、「どのように行うのか?」のノウハウ論を展開しても効果がありません。安易に「マネージャー層の目標管理運用スキルが問題」と片付けるのではなく、目的に照らして、今何をやらねばならないのかを考えてみる必要があると思います。

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